【酒学講師が解説】日本酒の冷やとは?ぬる燗とは何度のこと?

2021/09/09

日本酒講座

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日本酒の飲用温度

日本酒は冷えた状態のものから温めたものまで、実に幅広い温度帯で好んで飲まれます。これはワインやビールをはじめとした他の醸造酒にはあまり見られない固有の特徴です。

とびきり燗、熱燗、上燗、ぬる燗

日本酒は飲用温度帯によって、以下のように 細かく分けられています。一般的には冷蔵庫で 冷やされている状態を「冷酒」、常温のものを 「冷や」、40℃近辺のものを「ぬる燗」、50℃ 近辺のものを「熱燗」と呼びます。


ぬる燗の飲み方は、特に人気のある飲み方の一つです。

人間の味の閾値と温度との関係性をHahnが測定し発表した論文があります。この閾値を強度と読みかえて用い、ぬる燗くらいの温度帯が最も甘みが感じられるとしてぬる燗の飲み方が一世を風靡しました。Hahnの実験で使われた味のサンプルは無機塩を用いたシンプルなものですが、実際の日本酒は有機酸が多く、より複雑な味の相互作用のもとに成り立っています。Hahnの図は一つの重要な指標ではありますが絶対的なものではなく、どのお酒もぬる燗が最も美味しい温度とも限りません。それぞれのお酒の成分によって味の相互作用も起こるので、適正温度もそれぞれ変わってきます。

盲目的にぬる燗が美味しいとして飲むのではなく、それぞれのお酒と一本一本向き合うことがよりおいしく飲む秘訣ではないかと思います。

味覚と感度と温度との関係の図

日本酒の冷やとは?

日本酒には「冷酒」と「冷や」という呼び名があります。一見似たような呼び名ですが、紛らわしいことにこれら2つの指し示す温度帯は異なります。

「冷や」という呼び名は冷蔵庫が普及する以前から使われている呼び名です。当時は温めて飲む「燗」と、温めずに飲む「冷や」という2通りしか飲み方がありませんでした。この為「燗」と対比して「冷や」と名づけられました。その後、冷蔵庫が一般に普及して「燗」と「冷や」以外にも冷蔵庫で冷やすという飲み方が選択肢として増え「冷酒」と呼ばれるようになりました。しかし慣例的に常温のお酒も「冷や」と呼び続けている為、混同されて現在に至っています。

現在では混同を避けて、常温のお酒をあえて「冷や」と呼ばず「常温」と記載する飲食店もあれば、そもそもすべてのお酒を冷蔵保管しており、「冷や」の注文に対して冷蔵保存のお酒を提供する飲食店もあります。あえて慣例に従って常温のお酒を「冷や」と呼んで注文して自分の想定通りのお酒が出てこない、なんて事態を避けるためには「常温」「冷酒」と注文した方が間違いが少ないのかもしれません。

日本酒使用の温度計は数々あれど、このタイプの温度計が個人的には一番使いやすく、実際にこの温度計をお店で使っています。 水銀の温度計よりも温度変化に対する反応が敏感で、飲み時を逃さないプロ仕様の酒温計です。↓

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